今まで「日本語の乱れ」などとほざきつつ悠長に書いてきたが、緊急事態が発生した。今回は前回の「ら抜き言葉」に続いて「さ付き言葉」について書く予定だったが、次回に後回しにする。

 

緊急事態というのは、いよいよ始まった国会の論戦である。その場で福田新総理が野党の議員に対して、連発して使っていたのが「おっしゃられる」だ。しかも、総理一人だけではない。居並ぶ国務大臣(うーむ残念ながら誰だったか正確に覚えていない)も、立て続けに発していた。

 これは大間違いである。最近、世間でもちょくちょく耳にするようになった非常に不愉快な言い回しだ。このまま放っておくと、正しい日本語になってしまいそうな勢いなので、あえて「緊急事態」として、書くことにした。

 

 敬語は、私が中学生の頃は尊敬語・謙譲語・丁寧語の三つに分けられていた。国語の時間にそう教わった。だから、今までそう思って生きてきた。ところが最近、文部科学省だかどこかだが、これに丁重語と美化語という二つを付け加えたという話を聞いた。判りにくい分類だが、ま、それはいいだろう。「そんなの関係ねえ♪」

 

 「おっしゃる」は「言う」の尊敬語である。「偉い人がものを言う」ことを「おっしゃる」というのだ。尊敬の念を込めて使う言葉である。

 「言う」の謙譲語は「申す」である。自分がへりくだった言い方だ。「私からあなたに申す(申し上げる)」という風に使う。これは余談。

 「言う」の尊敬表現にはもう一つ「言われる」がある。これは前回のネタとかぶるが、「れる」「られる」という助動詞の「尊敬」の意味での用法だ。さらに重複するが「れる」「られる」にはこのほかに「可能」と「受身」が含まれる。

 

「おっしゃる」に話を戻そう。得意の広辞苑第四版・CDロムによると、以下のとおりだ。

おっしゃ・る【仰しゃる】

〓他五〓(オオセアルの約オオシャルの転) 「言う」の尊敬語。仰せられる。

 

 また、手元の角川新国語辞典では、

おっしゃ・る【仰有る】(「おおせある」の縮約形「おおしゃる」の転)「言う」の尊敬語。言われる。おおせられる。

 

とある。つまり「おっしゃる」は、それ自体が「尊敬語として完結している」のである。

「先生がおっしゃることは」「先ほどおっしゃったように」などと使う。さらにこれを丁寧に言う場合は「おっしゃいます」になる。これは正しい用法だ。尊敬+丁寧だからOKなのだ。

しかし尊敬の意味の「られる」をくっつけると誤用になる。「尊敬」に「尊敬」を重ねてはいけないのだ。だから「おっしゃられる」は、間違いなのだ。

 

 やめてくれよ、気持ち悪いから。

 

私が耳にした中で使用頻度が高いのは、石原伸晃だ。元々あんまり「頭いい」とは思えない人だが、せめて日本語だけは正しく使って欲しい。テレビで多くの人が使うと、あっという間に世間一般に広まってしまうのだ。

 

 こんな「おっしゃられる」が正しい日本語と認知されるのだけは、是が非でも阻止したい。みなさんも、決しておっしゃらないでください。

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