今回は、ちょっと視点を変えて、サッカーの話を書く。まったくの余談だが、その昔1997年の一年間、天下の“スポーツニッポン(略称スポニチ)”にサッカーに関するコラムを連載していたことがある。「月曜パスエッセー」というタイトルで、毎週月曜日に四人が交替で書いていた。
  その四人とは、川渕三郎(当時Jリーグチェアマン)、ラモス瑠偉(当時京都パープルサンガ選手)、金子達仁(新進気鋭のサッカージャーナリスト)、そして私春風亭正朝という錚々たるメンバー(自分で言うなって?)であった。この四人が週替りで原稿を書くのだ。自分の担当は、四週間に一回回ってくることになる。ここまで、完全な自慢話である、へへへ・・・。
  その連載第一回に、私はサッカー中継の実況アナウンサーに対する苦言を書いた。用語のいい加減さを指摘したのだ。「ゴールポストとクロスバーの違いも分からないアナウンサーがいる」ということを書いた。
  「打ったシュートが惜しくもポストに当たりました」などという実況を耳にするが、縦に2本立っているのが「ポスト」で、その間を渡した上の横棒を「バー」または「クロスバー」という。
  くどいようだが、グラウンドから垂直に立っているのがポスト、その上の横棒がバーだ。英語のそもそもの意味を考えれば、容易に理解できるはずだ。
  ところが、これを根本的に理解していないアナウンサーがいたのだ。明らかにバーをたたいたのに、「ポストを直撃しました」だの、逆に「バーの左に外れました」などと言うトンチンカンアナウンサーがいた。そのことを書いたのである。
  すると、この私の指摘がスポニチに掲載されて以降、そんな初歩的な過ちを犯すアナウンサーは激減した。これは私のコラムの影響に間違いない。絶対にそうなのだ。いや、誰がなんと言っても私の功績なのだ、と信じている。思い込みというものは恐ろしい。
  もちろんスポーツニッポンというメジャーなメディアに掲載されたということは大きい。影響力は絶大(なハズ)である。

  さて、ここからが今日の本題。2008年3月9日放送のフジテレビ「ジャンクスポーツ」である。ゲストの前園真聖が「ハーフウェイラインからドリブルして」と正しい用語を使ったのに対し、画面下に現れた字幕ではなんと「センターラインから」と書いてあったのだ。これは間違いである。わざわざ間違えているのだ。世間にバカをさらすとはこのことである。心して読みなさい、ジャンクスポーツ。
  実はこれも前記の「バー」と「ポスト」のように「ありがちな間違い」なのだが、サッカージャーナリズムや世間一般にも啓蒙していかなくてはならない問題であるから、あえて書く。

  いつものように、言葉の意味から考えよう。「ハーフ」は「半分」である。「センター」は「真ん中」だ。「半分」と「真ん中」は、似ているようだが違うのだ。
「ハーフウェイ」とは「半分の道のり」ということである。目的地まで「半分」だから「ハーフウェイ」なのだ。つまり、自分のゴールから相手ゴールまで、半分のところにある。そういう意味では「真ん中」と言ってもいいが、センターではない。
  では「センター」とはなにか?サッカーの用語では、自分のゴールから相手ゴールの方向に向かって立つことを「前を向く」という。で、前を向いて右手の方向が右サイド、左手が左サイドである。当たり前だが、よく理解しておいて欲しい。目の前の真ん中が「センター」なのだ。
  こういう使い方はあまりしないが、サッカーの世界で「センターライン」と言えば、ゴールキーパー、センターバック、センターハーフ、センターフォワードという縦に真ん中に並ぶ選手のことを指す。くどいようだが、あまりこういう言い方はしないのだが、あえて使うとすれば、ということだ。
  野球の場合で考えよう。野球の「センターライン」という言葉は、ピッチャーとキャッチャーのバッテリーから、セカンド、ショート、センターという守備のラインを指す。「センターラインがしっかりしたチーム」などという表現をする。
  もう一つの例をひく。道路の「センターライン」である。これは、道の真ん中を縦に走っている線だ。自分の走行する車線と、対向車線を区分けする線のことである。「道路の真ん中」だから「センターライン」だ。
  ここまで書けばご理解いただけるだろう。スタジアムのメインスタンドから見て(テレビの実況中継で映し出される画面で)、右端と左端にゴールポストがあって、正面の真ん中に入っている一本の白線を、ハーフウェイラインというのである(ちなみにその真ん中に書いてある円をセンターサークルという)。このハーフウェイラインを、センターラインと言ってはいけないのだ。これは間違いである。マスメディアはこれくらいの見識は持っていて欲しい。サッカーファンも、このことは理解して正しい用語を使って欲しいものである。今回の「笑止千万」はワリとぬるめな話で終わり。

  最後にJリーグが始まった当初の一口話をご披露しよう。Jリーグスタート以前は、圧倒的にサッカーよりもラグビーの方が人気があった。国立競技場の早明戦、明慶戦などは超満員になったものだ。プラチナチケットと言われた。新日鉄釜石の松尾や、神戸製鋼の平尾などは、まさにスターだった。それに対して日本サッカーリーグの試合とか、天皇杯の準々決勝、準決勝なんて、国立競技場はガラガラだった。サッカーファンにとっては実に悔しい現象だった。そうした中で始まったJリーグの実況中継では、ラグビー専門のアナウンサーが付け焼き刃で放送したりした。そこで生まれたのが以下の名文句
「ここで長い笛が吹かれました。ノーサイドです」だって、チャンチャン!

これ、本当にあった話です。分かる人だけ分かってくれればいい。

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