このコラム(てえほどのモンでもないが)がサイトを移籍して、最初の原稿である。今まではKICOMSさんに頼まれて原稿を送っていたのだが、私自身がホームページを開設したので、こちらに公開させていただくことにした。今後とも、ご贔屓を願いたい。
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さて、今回の気になる日本語は、その「させていただく」である。言わずと知れた「へりくだった表現」だ。余談だが、ワードで「へりくだる」を変換すると「謙る」「遜る」という両方が出てきた。「謙遜」という言葉は、両方とも「へりくだる」と読むらしい。今、初めて知った。してみれば「謙遜」は「へりくだる・へりくだる」ということになる。同じ意味の字を二つ重ねた熟語というのは多いが、同じ訓読みが二つ重なる熟語というのは珍しいのではないだろうか。調べたわけではないし、調べる気もないが、どなたか教えていただけたら有り難い。
この「○○させていただく」という表現、私は好きじゃない。最初にマスコミに頻繁に登場してきたのは、今から数十年前、漫才の西川きよし氏が参議院選挙に出た時ではなかったかだろうか。きよしさんは「大きなことはできませんが、小さなことからコツコツと・・・」というキャッチフレーズで選挙戦を戦った。そして、見事当選した。この言葉は後に吉本の芸人のギャグとしても使われた。
選挙戦で彼は「やらせていただきます」「国会で働かせていただきます」「仕事をさせていただきたい」などと連発していた。この手の「させていただく調」は、現在の選挙演説でも普通に使われることが多い。ここまでは、まあ、いいだろう。日本語として間違ってはいないと思う。だが、なんでもかんでも「へりくだりゃあいい」ってモンではないのだ。
微妙に「違うな!」と感じたのは「立候補させていただいた」という言葉を聞いた時だ。かすかな違和感を覚えた。
あれっ?議員の立候補って、誰かの許可を得て、誰かに許してもらって、立候補「させていただく」ものなの?
そうじゃないだろう。立候補というのは、あくまでも自分から主体的に「出るぞ!」「立つぞ!」「俺がやらなきゃ誰がやる」と決意して、アクティブに行う行為のはずだ。
耳の底に「ザラッとした」なにか気持ち悪いモノが残った気がした。
さて、今回の参院選である。自民党の歴史的大敗だった。朝のワイドショーで小倉智明が石原伸晃にこう訊ねた「自民党は選挙前から危機感を持っていましたか?」石原伸晃の答えは「はい、私達は危機感を持たせていただきました」だった。
「おいおい、誰に持たせていただいたんだよ、危機感を!」と突っ込んだ。
「○○させていただく」という表現の底には、「有り難く」とか「感謝の気持ちをもって」という意識がある。
「ご飯を食べさせていただく」「留学させていただく」「一曲歌わせていただく」などと言う場合、いずれもその前に「おかげさまで」とか「ありがたく」などという言葉がついて不思議はない。文章として自然な流れといっていい。
自民党は感謝の気持ちをもって、ありがたく「危機感を持たせていただいた」ようである。馬鹿かっ?
それにしても、丸川珠代が当選したのが不思議でしょうがない。最近の選挙に一度も投票してないんだよ。そんなヤツが「私に投票してください」だって。恥を知れ。